Better Days

Think Simple. Lead the myself

岡田武史の代表監督観

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サッカー日本代表の岡田武史監督が11日母校の早大での講演の模様。全7ページ。彼が持っている哲学はもちろん、こういう伝え方ができたらと思った。この哲学が世界に通用するかは、6ヵ月後の2010年6月14日のカメルーン戦で分かることだが、とにかく頑張って欲しい。
Business Media 誠:岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは (1/7)

「監督の仕事って何だ?」といったら1つだけなんです。「決断する」ということなんです。「この戦術とこの戦術、どっち使う?」「この選手とこの選手、どっち使う?」ということです。ただ、「この戦術を使ったら勝率40%、この戦術だったら勝率60%」「この選手だったら勝率50%、こっちの選手だったら勝率55%」、そんなもの何も出てこないんです。答えが分からないんですね、それをたった1人で全責任を負って決断しないといけない。

サイド攻撃、中央突破。岡田監督なりの"勝つための理屈"と"選手のアイデンティティ"
勝てる理屈だからこそのアイデンディティの喪失。壮絶な仕事なのだなぁと思う。

「負けるのは仕方がない。でも、このままだと何回やっても同じことの繰り返しだ。どうしたらいいんだろう」ということで考えたのが、明確な共通した目標を持つこと。そしてもう1つは、「このチームはこういうチームなんだ」という“フィロソフィー(哲学)”を作ること。

岡田武史の完成されたフィロソフィー

  1. enjoy
    自分の責任でリスクを冒すこと
  2. our team
    このチームは誰のチームでもない。俺のチームでもない。お前ら1人1人のチーム
  3. do your best
    チームが勝つためにベストを尽くせ。チームが勝つことに拘る
  4. concentration
    今できることに集中しろ
  5. improve
    今を守ろうとするな。常にチャレンジ
  6. communication
    お互いを知る

チームにこういった哲学が一本通っていれば、ラクなのであろうと感じた。先日の出張の際に、小手先のテクニックばかり教えようとしている自分がいて、"木を見て森を見ず"な自分がいたので参考にしたい。

僕はいろんな決断をする時に、「明日死ぬとしたら今どうするだろう」と自分を追い込みます。人生というのは「おぎゃー」と生まれてから、必ず来る死というものに一歩一歩進んでいくだけなんです。僕なんかはもう半分以上進んでいるんですけどね。誰もが必ず死ぬんです。この講演の帰りにポロッと死ぬ人もいるかもしれない。その間をいかに生きるかなんですよ。何もなく、のほほんと生きていくのも人生です。「生きているだけですばらしいこと」とよく言います、その通りです。

こういう意識を持っている人間が少ない。それが良いとか悪いとかではなく、やらせる側としてはこういった意識をもっていると一緒にやりやすいと思う。

あと、例え話がとても秀逸だった。当事者意識とかの話に使おう。

倒産しそうな会社の経理。
会社の商品が売れないで倒産しそうな時に、「僕は経理ですから」とか言っていたらダメ、どんなにすばらしい計算をしても会社が倒産したら一緒です。残り時間10分で0対1というのは、「みんな外に出て商品を売ってこい」という時です。でも、僕はそれをやらせてしまっていたわけなんですけどね。自分のチームを「キャプテンが何とかしてくれる」「監督が何とかしてくれる」と思わせてしまっている。「違う。お前が何とかするんだ、このチームを」ということなんです。

村の祭り酒。
収穫を祈念して、夏祭りをする村があった。祭りでは、お酒が入った大きなたるを、みんなでパーンと割って始める風習があった。ところがある年、貧乏でお酒が買えなくて、みんな集まって「どうしよう、これじゃ祭り開けねえな」と悩んでいた。するとある人が、「みんなが家からちょっとずつお酒を持ってきて、たるに入れたらどうだ?」と提案した。「それはいいアイデアだ」ということで、みんなが持ち寄ってたるがいっぱいになった。「これで夏祭りを迎えられる。良かった」ということで当日にパーンとみんなで割って「乾杯」と言って飲んだら、水だったという話です。みんな、「俺1人ぐらい水を入れても分かんないだろう」と思っていたんです。

芝生。
肥料や水をバンバンやると根が伸びないんです。見た目はきれいなんですけど、スパイクでちょっと歩くとグニャっとめくれるような芝生になってしまいます。芝生も大したもので、水をちょっとやらないと茶色くなって枯れたふりをするんです。そこで水をやると、「人間、まだ甘いな」となめてかかられる。さらに放っておくと、「やばい」と思って、自分で根を伸ばして水を探しに行く

あと、遺伝子のスイッチ。

経営者でも「倒産や投獄、闘病や戦争を経験した経営者は強い」とよく言われるのですが、どん底に行った時に人間というのは「ポーンとスイッチが入る」という言い方をします。これを(生物学者の)村上和雄先生なんかは「遺伝子にスイッチが入る」とよく言います。我々は氷河期や飢餓期というものを超えてきた強い遺伝子をご先祖様から受け継いでいるんですよ。ところが、こんな便利で快適で安全な、のほほんとした社会で暮らしていると、その遺伝子にスイッチが入らないんです。強さが出てこないんですよね。ところがどん底に行った時に、ポーンとスイッチが入るんですよ。

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