Better Days

Think Simple. Lead the myself

競争社会における優越感と劣等感

昨日、トラックバック頂いた記事で「んっ?」と思ったところ。

勉強は、「判らないものが判るようになり」、「出来ないものが、出来るようになる」ので、脳の中では達成感・成長感という報酬が出るはずです。勉強が出来る人の多くは、達成感や成長感に喜びを感じます。また、優越感もありますが。他人との比較による劣等感で、帳消しになっている気がします(常に半分の人の学習意欲を悪化させる競争原理の難点です)。
なぜ勉強しろと言えば言うほど成績は下がるのか。モチベーションの話。 - 創造力コーディネータの日記

達成感や成長感は自分の中で完結するものであるが、優越感や劣等感というものは他者がいて初めて成り立つと思われている。(だからこそ元記事でも競争原理の難点と書いている)

人間は成長の過程で自我を発達させるが、この段階で他人との競争意識が生まれ、その競争面での挫折の結果が劣等感とみなされる。劣等感 - Wikipedia

ただ、そもそも劣等感は、心理学者アルフレッド・アドラーの定義によれば、
「理想の自分に対して現実の自分が追いついていない、という不足感」
であり、他人とではなく、自分と比較して起こるものであり、完璧な自己への欲求から来るものなのだ。
つまりは、劣等感には競争社会も有能な他者も必要ない。

もちろん自己を評価するための他者の存在というのは大きい。
レオン・フェスティンガー(Leon Festinger)の社会的比較理論(social comparison theory)では、「人は社会環境を適応的に生きていくために、自分の意見や能力を正しく評価したいという動機があり、そのために自分と意見や能力が類似した他者との比較を行う。」とある。
また、他者との比較という面では、"自己を高め、望ましいものとして知覚したいという自己高揚動機が作用する場合、自分より劣った他者が比較対象として選択される"という下方比較と、"自尊感情が高まっている場合や自己向上動機が作用する場合には、自分より優れた他者と比較を行う"上方比較の2つがあるとしている。

つまりは、優越感を感じるのは、自己を高く評価しようという"自己高揚動機"が働き、自分よりも成績が下の者と比較する場合である。
ただ、劣等感を感じるのは、次の2つがあると思う。

  • 自己の理想像が高く、"理想の自分"と"今の自分"を比較して、今の自分が劣っているとき。
  • 自己を評価しようと他者と比較したときに、有能な他者がいたとき。

逆に、優越感が"理想の自分"と"今の自分"を比較して、今の自分が上回っているときにはなかなか起きえない。あくまでも他者が必要である。

したがって、優越感が劣等感によって、差し引きゼロになることはない。どちらも自尊感情を高めるためには、適度に必要であるし、優越感の反対が劣等感であると素直に言えるものでもないからだ。
いずれにせよ、過度の優越感や劣等感はストレスの原因となるため、注意が必要だと思う。

○参考
社会的比較理論(フェスティンガー)の3つの原理

  1. 客観的な方法がない場合は他人と比較して自己評価する。
    ⇒例えば、他人の能力と比較して自分の能力を評価し、他人の意見と比較しながら自分の意見がどうであるか評価する。
  2. 自分と似た者を比較して自己評価する。
    ⇒自分の意見や能力と類似性がない場合、その人を比較対象にはしない傾向がある。
    例えば、どれだけサッカーが上手くできるのかを知りたいときに、プロのサッカー選手とは比較せず、同級生や同じグループの仲間と比較する。
  3. 自分の意見や能力を集団に合わせようとする。
    ⇒例えば、自民党支持者が他の党員と比較して、自分の意見はあまりにも急進的であると感じた場合、自分の意見を修正して他の党員の意見と合わせようとする。

また、自己評価を欲すれば欲するほど他者と比較しようとし、さらに、他者との親和性を高めようとする。

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